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自衛隊の移動式お風呂
ちょっと意外な装備としては、移動式のお風呂や台所があげられます。
自衛隊には「野外入浴セット」という移動式の浴場設備があります。ガスや水道が途絶し、住宅の風呂と銭湯が使えない被災地ではこれが活躍します。
例えば阪神淡路大震災のときです。被災者の避難が長期化し始めたころから、自衛隊はこの装備を使って仮設浴場を提供しました自衛隊が全国にもっている野外入浴セットの8割が集められ、公衆浴場としました。
ところがここで役所から文句がつきました。公衆浴場法に違反しているというのです。法律によれば公衆浴場は循環式のものしか認められていないが、野外入浴セットはそれではないので、法律違反となり困る、というのです。自衛隊の司令官だった松島もと陸将はこう書いています。
困るといわれても、1週間も風呂にはいっていない被災者のことを考えれば、なんとか入浴させてあげたいと思い、「われわれがきちんと衛生管理していますから、大丈夫です」と説得して、ようやく実現の運びになりました。
地震発生1週間後の1995年1月24日に最初の仮設浴場が神戸新港第一突堤に作られ、それから続々と、合計21ヵ所に24セットの仮設浴場が運用されました。持っているものを全部被災者のためにつかったので、自衛隊員はお風呂に入れず、しかたがないので神戸港に停泊している護衛艦のお風呂を借りました。
この仮設浴場は大好評で、いちばん使われたものでは、撤退するまでにのべ5万人の利用者を数えています。入浴所の運営にはボランティアが積極的に支援しえくれましたが、風呂にはいった誰もがほんとうに喜んでくれて、日本人にとって風呂にはいることの意味がたいへんに大きいことを感じました。*6
公衆浴場は風呂にも入れないでいる被災者の皆さんのため、健康管理の役立つよう供されたものですが、精神的な衛生にも寄与したのではないでしょうか。
野外炊具車による炊き出し
また、移動式の台所、「野外炊具1号」というトレーラーも活躍しました。これは陸上自衛隊が野戦などで展開するときのためのものです。走りながら、200人分の炊事を45分で仕上げることができるといいます。阪神淡路大震災のときにはこれが87両投入され、炊き出し所として活動しました。総計で57万7000食を提供したそうです。
ですがここでも神戸市役所から待ったがかかります。自衛隊が食事を提供している場所では温かいご飯がでるのに、そうでない場所では冷たいご飯しか食べられなかったのですが、それで苦情がでたというのです。そこで不公平が生まれてはいけないというので、2月11日には神戸市から、自衛隊の炊き出し中止の要請がだされたそうです*7。
神戸市においては温食を食べることが出来る被災者とそうでない被災者の間に不公平が生まれるとの理由から2月11日をもって終了した。
……給食支援が終了した後これらの部隊が実施できることはお湯の供給と缶詰のボイルであった。食糧の供給さえしなければ良いという判断が働いたのか、この活動は実施され、被災者から感謝の声もあった。
阪神・淡路大震災における活動_人命救助、給水・給食支援_自衛隊の災害派遣について知ることのできるページ
それについてはともかく、野戦に備えている自衛隊の後方補給能力は、物資の輸送から給食、給水、入浴とさまざまな面で被災地を支援するインフラとなります。これらの能力は、被災者の生活を守るだけでなく、警察・消防や全国から駆けつけたボランティアなど、そのほかの救援組織の活動を支援することにも使えます。