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19世紀における世界の進歩は非常に驚くべきものがあった。さらに歩みを進めて20世紀は一体どんな時代になるのだろうか。その大時期の冒頭にあたり、人気のジュール・ヴェルヌの未来小説のように、遙か未来を予見するのも面白い。
 世界の列国の政治状況はひとまず措き、物質上の進歩を想像してみよう。

●無線電信および電話
 マルコーニが発明した無線はいっそう進歩して、無線電話で東京からロンドンやニューヨークと自由に話せるようになる。

●遠距離の写真
 数十年後にヨーロッパで戦争が起こったときには、東京の新聞記者は編集局にいながらにしてカラー写真を電送できるだろう。

●野獣の滅亡
 ライオンや虎、ワニといった野獣はアフリカからも絶滅し、ごくわずかが大都会の博物館で生き延びることになる。

●サハラ砂漠
 サハラ砂漠は次第に沃野になり、東半球の文明は中国・日本・アフリカで徐々に発達するだろう。

●7日間世界一周
 19世紀の末では少なくとも80日間かかった世界一周も、20世紀には7日もあれば十分だろう。文明国の人間は、男女を問わず必ず一回は世界漫遊の旅をする。

●空中軍艦、空中砲台
ツェッペリン式の空中船は大いに発達し、軍艦は空を飛び、空中には砲台が設置されるはずだ。

●蚊およびノミの滅亡
 衛生状態が改善され蚊やノミがだんだんに絶滅する。

●暑さ寒さ知らず
 暑さ寒さを調節する器械が発明され、この器械のおかげでアフリカも進歩する。

●植物と電気
 電気で野菜を成長させられる。このため空豆はオレンジほどの大きさになり、菊・牡丹・バラは黒や緑の花を咲かすものも出てくる。グリーンランドにさえ熱帯植物が育つだろう。

●人声10里に達す
 伝声機が改良され、10里(40キロ)離れた男女が延々と愛を語れるようになる。

●写真電話
 電話は相手の顔が見られる。

●買い物が便利に
 写真電話を使えば、遠距離の品物を選んで購入できるようになる。品物は地中の鉄管を通って瞬時に届く。

●電気の世界
 薪も石炭も枯渇し、電気が燃料となる。

●鉄道の速力
 列車は非常に進化し、暖房冷房装置が完備するなど、あらゆる便利が実現する。早さは急行ならば時速50マイル以上(約80キロ)で、東京神戸間で2時間半。今日4日半かかるニューヨーク・サンフランシスコ間は一昼夜で行けるようになる。
 もちろん動力は石炭を使わないから、煤煙の汚水も出ず給水する必要もない。

●市街鉄道
 馬車鉄道や鋼索鉄道は老人の昔話にだけ残り、電気車や圧搾空気車は大改良され、車輪はゴム製となる。文明国の都会では街路上ではなく、空中および地中を走るようになる。

●鉄道の連絡
 航海が便利になる上、鉄道は5大陸を貫通して自由に行き来できる。

●暴風を防ぐ
 気象観測が進歩し、1ヶ月以上前に天災を予知できるようになる。もっとも恐ろしい天災である暴風が起これば、大砲を空中に撃つことで雨に変えることが可能となる。
 20世紀も後半になれば、難船や津波もなくなるだろう。地震は消滅しないが、家屋や道路は地震に耐えられる。

●人の身幹
 運動術や外科手術により、人の身長は6尺(180cm)以上に達する。

●医術の進歩
 薬剤を飲むことはなくなり、電気針で痛みなしに患部に薬液を注射できる。顕微鏡とエックス線が発達することで病原の摘出、治療が自由になる。内 科手術はほとんど外科になり、将来は、肺結核でさえ肺を摘出して防腐のうえ殺菌できる。もちろん切開は電気により全く痛みがない。

●自動車の世
 馬車は廃止になり、自動車が安くなる。軍用も馬に代わって自転車と自動車がとってかわる。その結果、馬は奇特な人間がわずかに飼育するだけのものになる。

●人と獣との会話自在
 獣語の研究が進み、小学校に獣語科ができる。人と犬猫猿は自由に会話できるから、下女、下男は多くが犬に占められ、犬が人の使いをする世の中になる。

●幼稚園の廃止
 人智は遺伝により大いに発達し、家庭に無教養な人間はいなくなるから、幼稚園の必要がなくなる。男女とも大学を卒業しないと一人前と見なされない。

●電気の輸送
 日本は琵琶湖の水を使い、アメリカはナイアガラの滝を使って水力発電を起こす。そして電気を全国内に輸送することになる。
 以上のように考えてみると、いくらでも思いつくから、後は読者の皆さんの想像に任せよう。とにかく20世紀は奇異な時代だろう。

出典 報知新聞・明治34年1月2〜3日掲載分
探検コム 現代語訳