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人は昔から田畑で作物を作り、その実りを得てきた。しかし、現在、かつて田畑には
人を喰らい、作物の実りと引き換えに人質を要求する荒狂う神がいたことを皆忘れている。
神と言われはすれど、その姿は獣そのものであり、一切の慈悲もなく、嫁入り前の娘を
喰らう神。人はそれも自然の理だと諦めていたが、時にその圧倒的な力に立ち向かう者も
また存在した。神に刃を向けるなど不敬の最たるもの。その累を考えれば神の名前すらも
容易に口にすることは出来ない。だから、神に抗う人々は皆一様にこう言ったものだ。
「ちょっと田んぼの様子見てくる」
残された家族は涙を隠し、「あんた気をつけてね」と送るのが精一杯であった。
我々は決して忘れてはならない。食卓に並ぶ一品一品が彼らの決死の抵抗の
賜物であることを。「頂きます」は彼らの魂に敬意を表して、「ご馳走様」は
必死に駆けずり回った彼らの姿を脳裏に浮かべるために。我々日本人の食卓は
かくのごとく始まり、そして終わるべきなのである。