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ついつい魔が差して,ギャンブルのために会社の金を横領してしまったミケノビッチ。
明日は会計監査の日である。
進退窮まった彼は,妻に全てを打ち明けたが,妻はだまって荷物をまとめて出ていってしまった。
薄暗がりの中,絶望のあまり橋の上から川をのぞき込んでいたミケノビッチだったが,その時,後ろから彼を呼ぶ声がしたのである。
「おやめなさい。若い人」
振り返ると,黒いショールの信じられないほど年をとった老婆がいた。
「悩みを私に打ち明けなさい」
その老婆の不思議な雰囲気が,やけくそになっていたミケノビッチを素直にさせたのだろうか。
若者は全てを老婆に打ち明けたのだった・・・。
「若い人。全ては分かりました。私に出来ないことはありません。安心しなさい。
私が会社のお金を元に戻し,今までの出来事は全てなかったことにしてあげましょう。
そして,あなたの奥さんも家に戻してあげましょう」
老婆の黒く光る目をのぞき込みながら,ミケノビッチは尋ねた。
「いったいあなたはどなたなのです?」
不思議な老婆は,かすかに笑って答えた。
「私は魔女です。ただし,条件があります。
あなたは,これから一晩中私を愛さなければなりません。
そうしなければ,私は魔法を使うことが出来ないのです」
青年は,醜い,そして,しわくちゃの老婆をしばらく見つめた。
そして,ミケノビッチは,ホテルで一晩中,何度も何度も彼女を愛したのであった・・・。
翌朝,彼は服を着て,鏡の前で丹念に髪をととのえていた。
老婆は,ベットの中から黙って青年を見つめていた。
やがて,彼女は言った。
「あなたは歳はいくつ?」
「三十です」ミケノビッチは答えた。
「ひとつ聞きたいんだけど」老婆は言った。
「ちょっと歳が行き過ぎているとは思わない?魔女を信じるにしては」