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『僕は、そんな彼女と、もし地球上に俺と彼女以外存在しなくなったという仮定なら、チャンスの順番が回ってくると思って』

懐かしくなっちゃった。私も、小学校の高学年から中学生までの片思いでは、そういう妄想をよくしてた。
 
成績は良いけど、地味であんまり可愛くなくて、いつもマンガの話とかしてる微妙女子のグループに居た私は、
ありがちだけど、たまたま同じ班になっただけのスポーツのできる明るくて人気者の男子を好きになってしまった。
手が届かないっていう自覚はあるから、期待しないように必死で気持ちを抑えようとするんだけど、
たまに話しかけられたりするとすごく舞い上がってしまって、
でも可愛いグループの女の子と親しげに話してる様子を見るとまたへこんだりして。
彼と二人きりで無人島に漂着とか、学校が漂流教室みたいになってしまうとか、そういう妄想で自分を慰めてた。
 
女の子がたくさんいる中だったら、彼も可愛い子のほうを選ぶに決まっている。
でも、環境的に二人きりにされてしまえば、私を見てくれるかもしれない…みたいなさ。
そしてそんな、独占欲にまみれた汚い妄想していることを自己嫌悪したりした。
彼だって、私なんかより、可愛い子と付き合いたいに決まってる。
彼の権利を強制的に奪って私のものにして、私だけが得をする…そんな妄想が私の慰めになっていることが本当に辛かった。
 
彼は、私に何の印象も持ってなかったと思う。というか、覚えてすらいないんじゃないかな。
綿矢りさの「勝手にふるえてろ」もそういう小説だったんだよね。
こちらは、片思いの彼との会話をたくさん覚えてる。でも大人になって再会したら、向こうはこっちを覚えてすら居なかった。
もしかしたらこういうことって、他の女性も結構経験しているのかもしれない。
 
高校生、大学生になって、男子と普通に仲良く出来るようになり、私を「親しい女子」と認識してくれるような、
いわゆる近しい関係の男子を恋愛対象に出来るようになった。そして恋人も出来た。
(思うに、中学までは女子と一切関わろうとしなかった地味系の男子のうちの何割かが、高校・大学と進むなかで、
 女子への免疫がついて、話しかけるようになったのだと思う。私は何も変わってないのに、男子に話しかけられるようになったから)
中学までは、遠くの世界に居る男子に勝手に幻想を抱いて、ちょっとした会話も何度も何度も思い出して、
思い出すうちに脳内で美化してしまったりして浸って、クラスメイトに過ぎない相手を身勝手にアイドル扱いしていた。
多分、私が片思いしていた人気者男子の本当の姿は、彼の男友達や、女友達しか知らない。
私が彼を良く知らないことで得ていたものもあるんだと思う。好き勝手に美化して、妄想で消費できる、とかね…。
「触ろうと思えば触れる少女マンガ」みたいなもんだよね。
幻想は触った瞬間に瓦解するんだろうね。
 
人に勝手に理想を抱いて、押し付けて妄想することをやめたのは、男友達が出来たことがきっかけだったと思う。
でも、男友達が居ても、自分が男の人に対して抱いている幻想を守ろうとして、
見たくない部分から目をそらし続けていたら、彼氏も出来なかったんじゃないかと思う。
『僕は、そんな彼女と、もし地球上に俺と彼女以外存在しなくなったという仮定なら、チャンスの順番が回ってくると思って』
これを見て、アイドルファンの人たちがどういう気持ちでいるか、わかった気がする。
あのときのような気持ちなんだね。