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563: 素敵な旦那様 2005/06/21(火) 04:15:13

前の記事>>538-541に近い話だけど。
俺の中学時代からの友人にAという男がいる。 大学時代に不釣合いなほど可愛い女性と知り合い、大恋愛の末23歳で結婚した。

幸せだったある日、事故に巻き込まれ怪我をして、失明をした。 角膜移植をすれば目はある程度見えるようになるらしいが、同時に別の特殊な手術も必要なことと、 その事故で片腕を無くした精神的なショックからか、角膜移植を拒否していた。


嫁さんは献身的に世話をしていたが、Aは目が見えないもどかしさや突然目を失ったことの怒りを嫁さんにぶつけることしかできず、 たまに俺が見舞いに行くと、嫁に申し訳が無い、早く離婚したい、嫁はまだ若くて可愛いから俺より良い男がいるはずだ、と泣いていた。

Aは一旦退院し、リハビリ通院を続けていた。 そんなある日、また別の不幸がAを襲った。 Aの嫁が仕事から帰る途中倒れ、病院に運ばれたのだ。 検査結果、リンパに癌があることがわかった。 即手術をすることになったが、その日から逆にAが嫁の身の回りの世話をするようになった。

目が見えないながらも、看護婦さんや介助の人に手伝ってもらい、なんとかこなしていたらしい。 俺はちょうど仕事の山場でなかなか見舞いにいけなかったが、嫁さんの手術が終わってしばらくしてから一度見舞いにいった。 すると、そのベッドには昔の見る影もないほど輪郭の崩れた嫁さんがいた。

どうもリンパの手術の後、物を食べることができず首や頬あたりの筋肉を一切使わなかったため弛んでしまったらしい。 ブルドックのように垂れた頬と異様に太った首。 顔に出していないつもりでも、俺の驚きに気づいたのか嫁さんは「いっきに100歳くらいのおばあちゃんになったみたいで、恥ずかしい」と笑ってみせた。

「でも、Aクンに見られてないからいいの。不謹慎かもしれないけど、Aクンの目が見えなくて良かったって思うの。 もし、私が死んでもAクンのなかではキレイなころの私をずっと覚えていてもらえるから」 笑いながら、でも、眼の端にうっすら涙をうかべながら彼女はそういった。

このとき、俺は知らされなかったが、癌が他にも転移していて、もう手の施しようがない状態だったらしい。 数ヶ月後、彼女は病院でAに看取られながらこの世を去った。

564: 素敵な旦那様 2005/06/21(火) 04:16:15

彼女は生前、医者と相談しもし自分が死んだら角膜を旦那に移植して欲しい、と言い残していた。 Aは悩んだ。 悩みに悩んだ末、移植を拒否した。 通夜の日、ひさびさに酔っ払ったAの隣に俺はいた。 Aは涙をぽろぽろこぼしながら「嫁さんの気持ちもわかるんだ。痛いほどわかるんだ。 でも、あれだけ迷惑をかけた嫁の目を貰うわけにいかないんだよ。 それにな・・・何より、嫁の顔に傷をつけたくないんだよ。

知ってるか?眼を取ったあと、義眼をいれるんだよ。 ニセモノの眼であいつあの世でどうやって生活するんだよ。 眼が見えないのは俺だけで充分だよ。 嫁にはこれ以上苦労をかけられないんだよ・・・」 何度も繰り返しそう言っていた。

それから数年たち、Aは別の人から角膜移植をうけ、視力は一応回復していた。 今年の春も、二人で桜を見ながら酒を飲んでいた。 そして「あの時、嫁さんの目をもらっていれば、この景色は嫁さんにも見えていたんだろうかなぁ・・」とつぶやいていた。 「未だにあの時の選択が正しかったのか、間違っていたのかわからない」と。