通常表示に戻る

空白・改行を保持して表示します。横にスクロールできます。

“大勢の者が私の舟へ上がろうと思って舟のかまちへ手をかけてきたが、みながみな、
手の皮も顔の皮もべろっとむけてよう上がらぬ。私も手を引っぱってやる力がなかった。

15、6歳の女学生が一人、私の舟に乗ろうと思って泳いで来て、もうすぐ手の届く所で
力尽きて沈み、またひょっと顔を上げたのを見たら、
顔が突然お面がはずれる様に前半分がパックリと割れてしまった。

目や鼻や口のあったところがへこんでいるだけで、
ピンク色の桃のようにツルリとした顔の後ろ半分だけが残ったのだ。
その子の顔は、水中に沈んだかと思うと、髪の毛が黒い渦となって流れて行った。

温品道義・広島「原爆許すまじ」より