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529 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2013/05/04(土) 20:06:07.77 ID:FpbL+zkr
ある人が紺屋(染物屋)に着物の染付を頼むため、注文書にその内容を細かく、仮名で書いて持たせた。

『せなかにふとうを、いかにも手際よくありありと付けるへし』

紺屋はこれを見て、「これは一興なる事を好むものだろうか。しかし必要あるものだろう。」と考え、
絵の上手に頼んで型紙を彫り、背中に染め付けたものを見れば、
不動明王が巌に立ち、火炎凄まじく描かれ、剣を持たせていかにも厳しくありありと染め付けられていた。

これを見た注文主は大いに驚いた。何故なら彼が頼んだのは「不動」ではなく「葡萄」だったからである。

「これは何だ!?何と心得てこんなことになったのか?これはりょうけん違いである!!
早く染め直すのだ!」」

そう言われ突き返されてきた。紺屋は注文書を見なおして

「不動はどんなものを見ても、剣は片手に持っているものばかりである。両手に剣を持たせよとは、
馬鹿げた好みであるとは思うが、客の注文である以上仕方がない。」

そして今度は両手に剣をもたせ、さらに凄まじい染付を付けた。
実にナイスな”りょうけん違い”である

これを見た注文主はもはや呆れ果て、もう仕方がないと諦めこれを受け取り、そのまま
捨ててしまったそうである。

総じて文章を書くときに、仮名だけで書いたものは読みにくくて役に立たないことが多い。
また仮名で書いたとしても、にごり(濁点)をきちんと書いておくべきなのである。

万松院殿(足利義晴)の御治世の前後では、京においてすら文字を書けるものは千人に一人も無かった。
しかし書を成すと云われる程の人は、後の世にも見られないほど見事な書を書かれた。
(義殘後覺)