コピペ運動会

まさしく奴は『怪物』だった━━
武器は二つ、目に見えない『ストレート』と消える『フォーク』
ボールは消えない、なんて言うのは傍で見てる観客の戯言
目の前でやられると本当に『見えない』のだ━━


俺は野球のド素人
体育の授業くらいでしかバットを握ったことはない
勿論一般常識のある成年男性としてストライク・ボール、セーフ・アウトぐらいのルールは知っている
しかし逆に言えばその程度の知識しかない。なので始めは断っていたのだが
所詮遊び、ルールは適当でいい、そもそも君がいないと試合が出来ない
と大勢に詰め寄られると俺にできるとことは急遽予定の入った奴を恨むことだけだった

試合前に一応のルール確認をしている時、『怪物』の存在に気付いた
音が違う、2球目3球目と来てふと思う、うちのピッチャーが投げていたのは『スローボール』だった…と
甲子園出場時、奴に『怪物』の形容詞が付いていたことを聞いたのはその時だった

ボールが投げられる、怖い━━
体は硬直し、目は意志とは関係なく反射で閉じてしまう
いや…、体が少し下がっている、無意識にボールから逃げたのか━━
おそらくど真ん中と思われる珠でこれだ、これが高めに来たら…尻餅でもついてしまうのではなかろうか
適当に遊んでくれるかと思ったが『怪物』は兎を狩る獅子、野球では手を抜かないタイプのようだ
キャッチャーに頼んでみるか…速すぎてボールが見えないので手加減してください、と
ここからなら小声で囁けば皆には聞こえないだろう、そんな馬鹿なことを本気で考えているとＱＢＫ
急に、ボールが高めに、来たので。驚いて尻餅をついてしまった…
「ボール！」
思わず目をつぶってしまったが尻餅をついたくらいだおそらくボールだろう
キャッチャーがこっちを向く、苦笑いをしている
ピッチャーも苦笑い、だが目は睨んでいるようにも思える
バッターもマジで!?という顔でこっちを見てる
やばい、ストライクだったか…もう家に帰りたい…