421 名前:彼氏いない歴774年[sage] 投稿日:2008/04/21(月) 12:38:15 ID:bq0Yxy+R
私は帰り道のすごく急な下り坂を、自転車に乗ってチキチキマシン猛レースみたいな不自然な体
制で下ってた時。
半分過ぎたあたりで、後ろから子どもの声がした。
「おね~さ~ん!あぶないからどいてて~!!」と小学生の男の子が叫んだ。
自転車に乗ったその男の子の後ろに続々と友達が到着して、
その中の女の子が「はやいよぉ!」と男の子に抗議してた。
七人いて、見た感じみんな一年生ぐらい。
私が先に下りきるのは無理だろうと思って、足を止めて端に寄った。
「いいよ!おいで!」と言うと、さっきの男の子を先頭に、
みんながブレーキの音を響かせて猛スピードで下っていった。
なんかその光景が懐かしくて、すごく綺麗で楽しくて、坂の下でたまってる子ど
もたちにお願いした。
「ねえ!もう一回やってみてくれない?」と言うと、
みんな顔を見合わせて何やら話した後、自転車を押して坂を引き返してくれた。
私のいる地点に来た時に、例の男の子がこう言った。
「なんですか~あなたは」
と照れくさそうに、お茶目な口調で。
反対に私は坂を全部下り、下でカメラを構えて待機した。
ようやく頂上まで辿り着いた男の子が、カメラに気づいて叫んだ。
「とるのかよ~!!」
他の子どもたちも嬌声を上げた。
手で大きな丸を作ると、それを見て、
またさっきのように男の子が先頭を切り、猛スピードで下ってくる子どもたち。
轢かれると困るので、端から手だけ伸ばしてシャッターを切った。
二回目の疾走を終えた子ども達に寄っていって、お礼を言った。
思った通りみんな小学校の一年生で、これからきょうへい君のお家へ行って遊ぶ
のに、
お姉さんのせいで遅くなっちゃったよと怒られた。
写真を見せてと言われたけど、間違えて違うボタンを押しちゃったと嘘をついた
。
子どもたちは汗のにじんだ頬を桜色にして文句たらたらだったけど、
その場でもう一枚撮ってあげるとたちまち機嫌が良くなった。
別れ際にみんなが通ってる小学校の名前を聞いた。
二枚目の写真を届けてあげるという約束と、
これからは自分たちの通ってる小学校や学年を、知らない人に教えないという約
束してバイバイした。
後日、できあがった写真を見て、私は愕然とした。
確かにあの場所で出会ったはずの、会話したはずの子どもたちが、写真の中に見
あたらなかった。
もちろん、一枚目にも。
写ってるのは、長く続く坂道と、どこかの家の玄関先だけ。
私は何がなんだかわからないまま家に帰り、子どもたちから聞いた小学校を調べ
た。
そして、そんな名前の小学校が存在しない事を知った。
けれど、確かに聞いた、笹塚というその名前が昔のそのあたりの地名だという事
が調べてくうちにわかった。
春の終わりの出来事。