375 名前:水先案名無い人[sage] 投稿日:2010/03/24(水) 12:03:35 ID:uzTdANTK0
ある山で滑落事故があった。あわや転落死かと思われた瞬間
男は片手で草を掴み、崖にぶら下がる格好で何とか一命を取り留めた。
だがこんな山奥に人が通りかかるはずもなく、すでに一時間が過ぎようとする頃
遂に男の右手は限界に達していた。男は自らの半生を振り返った。
「はぁ、もはやこれまでか・・・。それにしてもつまらん人生だったなぁ・・・
貧しい村に生まれ貧困な生活を余儀なくされ、それでも村人を助けんと犯罪に走ってもみたが失敗。
そして逃走・・・ 。挙げ句の果てには逃げ込んだ山で足を滑らせ絶体絶命。
寸前で助かったとはいえ来るわけもない助けを待ち苦痛に耐えての一時間・・・。
はぁ、なんで俺ばっかりがこんな目に・・・やはり神など存在しないという事か・・・。」
もう駄目かと諦めかけた時、背後から声が聞こえて来た。 その声は包み込む様な温かさでこう言った。
「長い苦しみによう耐えたのう。だがお前はもう助からん。そもそもお前は生まれて来た場所が悪すぎたのじゃ。」
男はハッと我に返り死にものぐるいで半身を返してみた。するとそこには古くからの書物に描かれている様な
紛う事なき神の姿が宙に浮かんでいた。
「おおおおぉぉおぉ!!」
男は思わず叫んだ。
「しかし他の者を助けんと願い、我が身を捧げんとする自己犠牲の精神は実に尊いものじゃ。」
男はその慈悲深い言葉に大量の涙を流した。
「もう諦めてもよいぞ。そなたの尊き行いは天に召されるに十分な行いじゃてワシが直々に天界まで送り届けてしんぜよう・・・。」
男は感激した。
「おおおお!!何ともありがたいお言葉!!・・・神よ!!今までの愚行をお許し下さい!喜んでお供させて頂きます!!!」
そう叫ぶと男は思い切って手を離した。
だが期待とは裏腹に男の身体は崖の谷底へと真っ逆さまに落ちて行った。
「な、何と!!!! やはり神とはそういう存在だったのか!! 最後の最後まで私を欺かれるつもりなのですか!! 神よ!!!」
地面に叩き付けられた男は空を見上げる格好で息絶えていた。彼が最後に見たものは、先程の神に連れられて天界へと昇って行く草だった。
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これは堕天(フォール・ダウン)してもおかしくないレベル