コピペ運動会

「汚部屋の国のアリス」

遊園地のような部屋で、アリスはどのゴミ踏んで前に進めばいいか躊躇しながら言った。

「芸術家になれるわ」

観覧車に見えたのは、うずたかく積まれた本に引っかかった、洗濯用の丸いハンガーで、
埃まみれの靴下が、まだぶらぶらと揺れていた。そこから不意に帽子屋の飄々とした顔がのぞく。
　
「実際困ってるんだよ、僕もね」

どこかのチョコレート工場の、おかしな工場長のような笑顔。

「困ってるようには見えないけど」

「困ってるさ。まず、前に進めない。
　探すだけで時間をつぶす、
　あげく探していたものを忘れる、
　張り切って買ったモノの無残な末路を見て気が滅入る、
　小さい物の整理の仕方がわからない、
　すべては収納のせいだと思い込み、収納箱だけ増える
　一度掃除したら永遠に、二度と、もう絶対にしなくていいと思い込んでしまう・・・」

帽子屋が指折り数えている間、アリスはとりあえず、いま、
もっとも、重要な役目を担うであろう、しかし長きにわたって行方を
くらませているという、かのホウキ氏の捜索に取りかかった。

台所のすみにある屑籠では、クリスマスツリーそっくりな形に、
お菓子の包みや、買い物袋が何かのお祭りをしている。

「お菓子の包みはすぐに捨てなきゃ、
　“例のお客さん”がきてしまうってママがよく言ってるわ」

そう言いながらアリスは、 “例のお客さん”を想像して身震いした。
艶々した黒い燕尾服を着た、平べったい彼は、もうすでにこの部屋のどこかで、
息をひそめているかもしれない。

「それに本は読むもので、服は着るものよ。
　ちゃんとみんなを元の場所で、元の役目に戻してあげなきゃ。」

最後のほうはひときわ大きな声で言い放ち腕まくりをすると
彼女はまずホウキ氏、次にバケツ嬢と雑巾氏とゴミ袋卿の救出に向かった