コピペ運動会

米国ニューヨーク州バッファローのケルビン・ステファン君（17歳）は、先日、見ず知らずの女性の命を救った。だが、実際には“見ず知らず”の女性ではなかった。7年前にケルビン君を死の淵から救い出してくれた女性だったのである。
7年前のある日のこと、ケルビン君は、弟が所属しているリトルリーグ・チームに帯同して、試合中にバットボーイをしているときに、不運に見舞われた。ウォームアップしている選手のバットが何かのはずみでケルビン君の胸を直撃したことにより、心臓が悪いタイミングで収縮し、停止してしまった。心臓震盪（しんとう）と呼ばれる症状である。
試合の観客の中に、病院でナースをしているペニー・ブラウンさんがいた。彼女がすぐにケルビン君のもとに駆け寄り、適切な心肺蘇生処置を行ってくれたおかげで、ケルビン君は九死に一生を得た。
ペニーさんは、チームの選手の母親。当初の予定では仕事が入っていて試合を見に行けないはずだった。だが、直前になって非番になり、観戦に来ることができたのだった。もし彼女が非番になっていなければ、ケルビン君が助かるチャンスは皆無に近かったかもしれない。
そして、7年後、今年の1月の終わりごろになって、“因果応報”の極致とも表現すべき因縁がペニーさんとケルビン君を結びつけた。因果応報とは、悪いことをすれば悪い果報、良いことをすれば良い果報が巡ってくることを意味する仏教用語である。ケルビン君の命を救ったペニーさんが、今度はケルビン君に命を救われることになった。
その日、ペニーさんは、レストランで食事をしていた。ケルビン君は、その店で皿洗いのアルバイトをしていた。だがペニーさんは、自分が7年前に蘇生した少年が店で働いていることなど知りもせず、ケビン君も自分を救ってくれた女性がお客として来ていることなど知りもしなかった。
ペニーさんは、何かの拍子で食べ物を喉に詰まらせ、呼吸が出来なくなった。周りの客が異常事態に気づき、大声で助けを呼んだ。
そのとき、ケルビン君は厨房で皿洗いをしていた。ケルビン君がボランティアの消防団員をしていることを知っていた店のスタッフは、ホールから大声でケルビン君を呼んだ。
ケルビン君は、ペニーさんのもとに駆けつけ、すぐに上腹部圧迫法（ハイムリック法）による処置を行った。これにより、ペニーさんの喉から見事に食べ物を取り除くことに成功した。
処置を行っている最中、ケルビン君は、その女性が誰なのかわかっていなかった。息を吹き返したペニーさんも、少年が誰なのかわかっていなかった。しかし、店にはケルビン君の母親も居合わせたのである。
安堵に包まれ、静けさを取り戻した店内で、ケルビン君の母親がそのことに気き、驚きの声を漏らした。ペニーさんもケルビン君も、店内のその他大勢全員も、その巡り合わせに驚嘆するばかりだった。
単なる偶然の一致なのか、それともやはり“因果応報”なのか。出来すぎた話のように思えるが、本件は、多くの海外メディアが伝えており、ヤラセなしの事実だと思われる。3つの点で紙一重である。

・7年前、ペニーさんが病院の仕事を非番になって観戦に行かなければ、ケルビン君は命を落としていた可能性が高い。
・上腹部圧迫法を習得しているケルビン君が店でアルバイトをしていなかったら、ペニーさんは命を落としていた可能性が高い。
・7年前にペニーさんがケルビン君の命を救っていなければ、ケルビン君はこの世に存在しておらず、7年後にペニーさんが命を救われることはなかった。（7年前のことがなければ、
　レストランで喉を詰まらせることもなかったという、時間旅行パラドックス的な突っ込みもできるわけだが）。