168 名前: ◆PDh25fV0cw [sage] 投稿日:2010/11/07(日) 23:20:18 ID:5DG5VIDJ
人の気配のない、暗い森。月や星は雲におおわれ、光源となるものは青年の持つ小さな懐中電灯だけ。自殺の名所であるこの森に、青年がやってきたのはやはり自分の人生を絶つためだった。
ナップサックから縄を取り出し、太い木の枝に結ぶ。
これで後は首をつるだけとなったとき、後ろから小さな物音がする。
驚いて振り返ると、小さな白いウサギが佇んでいる。
「あんたも自殺するのかい?」
ウサギは青年にいきなり話しかけた。青年はいきなりのことに面をくらい、声も出ずただただ呆然とした。
しかし、自分が狂っていたとしても後は死ぬだけだ、何の支障もない。最後に話したのがウサギというのも面白いではないか。何の面白みのない人生だったが、最後に面白いものに出会えたものだ、と自分を納得させた。
「ウサギがしゃべるとは、なんとも奇妙なことがあるものだ」
「それはそうでしょう、私は元々人間だからな。2年ほど前にここで自殺をした者だよ」
「なるほど、転生というものですか。ということは、私も死ねば何かに転生するということですか」
「そういうことになるな」
青年はウサギの前に座り、少し考える。
青年は虫が嫌いだ。もし虫に転生することを考えただけでも恐ろしい。できれば目の前のウサギのようなものになりたい。
「転生をあやつることはできないのか?」
「転生は人生の残量に左右されるそうだ。君はまだ若いから人間になるかもな」
冗談ではない、人間として暮らすことがいやで死ぬのだ、自殺して人間に転生したら意味がない。
「どうにかならないものなんですか?」
「人間に死後の世界はいじれないさ、諦めることさ」
しかし、そう簡単に諦められるものでもない。何度も何度もウサギに頼み込む。はたから見ればずいぶん滑稽な光景である。
「そこまで言うのならしょうがない。森の奥に賢者がいるから少し待っていてもらえるかな」
そういって森の中に消えるウサギ。
しばらくすると、小さな瓶を二つ持って帰ってくる。
液体が入ったものが一つ、紙が入ったものが1つ。
「これを飲めば転生せずに死ぬことができる、もう一つが死神の契約書だよ」
ウサギは紫色の液体と、見たことの無い文字が書かれた紙とペンを渡す。
「死神の契約書とは、すごい賢者もいたものだ」
契約書に名前を入れ、薬を開ける。特になんの匂いもしてこない。
「本当に後悔しないかい?」
「いいや、しないさ。自分で死ぬのだから」
ぐいっと一気に飲み干す青年。しばらくすると、気を失い地面に倒れ込む。
「やれやれ、薬を飲んだか」
森の奥から一人の男が現れる。老人にも、中年にも見える、なんとも不思議な感じの男だ。
彼は足元のウサギの機械を止めると、青年を担いで森の奥に向かう。
そして、森の奥の隠し扉を抜けそこに青年を置く。
「やれやれ、こんなと年齢で死のうとするとは勿体ない」
男がつぶやく。すると声に反応したのか、青年が目を覚ます。
「ん?ここはどこですか?」
男は大仰に答えた。
「ここは地獄だよ。転生せずに死んだのだ、ここで労働をしてもらうことになる。契約書にサインはしたのだろう」
「なんと、そういう契約書だったのか。これなら転生した方がましだった」
嘆く青年。これで青年は、”死ぬまで”ここで働くことになる。死後の世界から逃げ出そうと考える人間もいないだろう。
死後の世界というものは、便利なものだ。
コメント一覧
違うかっwwww!
糞青年ども
これだからゆとりはw
お前空気読めないってよく言われるだろ
自殺したい主人公が一番恐れているのは人間として生きている現状だから何も変わらないことに意味がある
星もそうだが
初期の筒井っぽくもある
流石に、いつかおかしいと気付くんじゃないかな
見たことない文字って書いてあるだろ
↑イイの数も脳みその量もショボいのがなんか喚いてる