■歴史上最高のチェスゲーム
1997年5月3日、マンハッタンのホテルの一室で、歴史に刻まれるチェスゲームが始まった。
「スーパーコンピュータ・ディープブルー Vs 世界チャンピオン・ガルリ カスパロフ」の一戦である。
第1局は、カスパロフの圧勝。カスパロフは自分の駒を敵陣に侵入させず、ディープブルーとの駒の取り合いを避けた。
そのため、ディープブルーにとって差し迫った危険がなく、どの手を選択しても点数に差が出にくい。
結果、点数の誤差の範囲で手を決めることになり、ミスを犯す可能性が増える。案の定、ディープブルーはミスを犯した。
カスパロフはそれを見逃さず、攻勢に出て、勝利したのである。
盤面を単純計算する方法では差が出にくい局面をキープし、敵のミスを誘い、スキを突いて勝利する。
カスパロフの胸のすくような作戦だった。この戦いの後、カスパロフは、
「私は自分の庭でプレイしていたすぎない」とウィットに富んだジョークをとばした。
■ディープブルーの反撃
第2局。ディープブルーの先手ではじまり、古典的な序盤戦となった。
ディープブルーは、序盤戦のデーターベースを駆使し、優位に立つ。これに対し、
カスパロフはデータベースにない奇策を用いて、ディープブルーを混乱させようとする。
だが、チェスの序盤戦はすでに研究し尽くされ、定石は確立されている。
極端な奇策はカスパロフにとって命取りになる。それでも、さすがはカスパロフ、一進一退でゲームはすすんだ。
そして、いよいよチェスの歴史に刻まれる神の一手がうたれる。
打ったのはカスパロフではなく、ディープブルーだった。
観戦していたグランドマスターたちは、ディープブルーの次の一手に、必勝の手を予測した。
それは、最強の駒クイーンをカスパロフの陣深く打ち込むディープブルー会心の一撃で、これで勝負が決するはずだった。
ところが、ディープブルーの第36手は、誰も予想しないものだった。クイーンではなく、ポーン(歩)を一歩前進させたのである。
それは、ディープブルーの機械の限界を露呈するような悪手に見えた。ところが、1人カスパロフだけが顔を引きつらせていた。
実は、カスパロフも、ディープブルーの次の一手が先の「クイーンの突撃」と確信していたのだ。
そして、誰もが信じた「とどめの一手」がうたれた直後、カスパロフは目の覚めるような大反撃をもくろんでいたのである。
そして、この反撃により、カスパロフの名はチェスの歴史に永遠に刻まれるはずだった。
ところが、ディープブルーはたった3分間の計算で、その歴史をひっくり返した。
歴史に刻まれた神の一手は、カスパロフではなく、ディープブルーだったのである。
■ディープブルー 神の一手
ディープブルーは、8手先まで瞬時に読むことができたが、その時点で先の「クイーンの突撃」に決めていた。
この手が最高点だったからである。そして、9手、10手と先を読んでも、やはり最高点は「クイーンの突撃」。
ところがここで、ディープブルーは”不安”を覚える。先を読めば読むほど、「クイーンの突撃」の点数が下がり続けたからである。
ということは ・・・
もっと深読みすれば、この手が最高点でなくなるかもしれない。
つまり、眼前の盤面は、前人未踏の20手先を読み切ったカスパロフの恐るべきワナかもしれないのだ。
ディープブルーは、この”不安”を現実と受け止め、他の手を捜すことにした。歴史的瞬間であった。
カスパロフは後にこう語っている。
「あの瞬間、私はディープブルーに『知性』を感じた」
だが、ディープブルーに「知性」はない。冷静に考えてみよう。ディープブルーは人間が書いたただのプログラムなのだ。
カスパロフが感じた「知性」も、「最高点の手を採用するが、もし深読みするほど点数が下がるなら採用しない」
というアルゴリズム(処理手順)に過ぎないのだ。
ディープブルーの驚異的な計算力をもってしても、時間内に20手先を読み切ることはできない。
それをおぎなうための補助機能にすぎないのだ。
もちろん、これは「知性」ではない。似て非なるものだ。ところが、カスパロフはこれを「知性」と感じた。
これは、高度な技術は魔法と区別がつかないことを示唆している。結局、カスパロフは、このときの衝撃から立ち上がることができなかった。
こうして、ディープブルーは歴史的第2局を制したのである。
第3、4、5局とドロー、そして第6局でついにカスパロフは敗北する。2勝1敗3引分、ディープブルーの歴史的勝利であった。
1997年5月3日、マンハッタンのホテルの一室で、歴史に刻まれるチェスゲームが始まった。
「スーパーコンピュータ・ディープブルー Vs 世界チャンピオン・ガルリ カスパロフ」の一戦である。
第1局は、カスパロフの圧勝。カスパロフは自分の駒を敵陣に侵入させず、ディープブルーとの駒の取り合いを避けた。
そのため、ディープブルーにとって差し迫った危険がなく、どの手を選択しても点数に差が出にくい。
結果、点数の誤差の範囲で手を決めることになり、ミスを犯す可能性が増える。案の定、ディープブルーはミスを犯した。
カスパロフはそれを見逃さず、攻勢に出て、勝利したのである。
盤面を単純計算する方法では差が出にくい局面をキープし、敵のミスを誘い、スキを突いて勝利する。
カスパロフの胸のすくような作戦だった。この戦いの後、カスパロフは、
「私は自分の庭でプレイしていたすぎない」とウィットに富んだジョークをとばした。
■ディープブルーの反撃
第2局。ディープブルーの先手ではじまり、古典的な序盤戦となった。
ディープブルーは、序盤戦のデーターベースを駆使し、優位に立つ。これに対し、
カスパロフはデータベースにない奇策を用いて、ディープブルーを混乱させようとする。
だが、チェスの序盤戦はすでに研究し尽くされ、定石は確立されている。
極端な奇策はカスパロフにとって命取りになる。それでも、さすがはカスパロフ、一進一退でゲームはすすんだ。
そして、いよいよチェスの歴史に刻まれる神の一手がうたれる。
打ったのはカスパロフではなく、ディープブルーだった。
観戦していたグランドマスターたちは、ディープブルーの次の一手に、必勝の手を予測した。
それは、最強の駒クイーンをカスパロフの陣深く打ち込むディープブルー会心の一撃で、これで勝負が決するはずだった。
ところが、ディープブルーの第36手は、誰も予想しないものだった。クイーンではなく、ポーン(歩)を一歩前進させたのである。
それは、ディープブルーの機械の限界を露呈するような悪手に見えた。ところが、1人カスパロフだけが顔を引きつらせていた。
実は、カスパロフも、ディープブルーの次の一手が先の「クイーンの突撃」と確信していたのだ。
そして、誰もが信じた「とどめの一手」がうたれた直後、カスパロフは目の覚めるような大反撃をもくろんでいたのである。
そして、この反撃により、カスパロフの名はチェスの歴史に永遠に刻まれるはずだった。
ところが、ディープブルーはたった3分間の計算で、その歴史をひっくり返した。
歴史に刻まれた神の一手は、カスパロフではなく、ディープブルーだったのである。
■ディープブルー 神の一手
ディープブルーは、8手先まで瞬時に読むことができたが、その時点で先の「クイーンの突撃」に決めていた。
この手が最高点だったからである。そして、9手、10手と先を読んでも、やはり最高点は「クイーンの突撃」。
ところがここで、ディープブルーは”不安”を覚える。先を読めば読むほど、「クイーンの突撃」の点数が下がり続けたからである。
ということは ・・・
もっと深読みすれば、この手が最高点でなくなるかもしれない。
つまり、眼前の盤面は、前人未踏の20手先を読み切ったカスパロフの恐るべきワナかもしれないのだ。
ディープブルーは、この”不安”を現実と受け止め、他の手を捜すことにした。歴史的瞬間であった。
カスパロフは後にこう語っている。
「あの瞬間、私はディープブルーに『知性』を感じた」
だが、ディープブルーに「知性」はない。冷静に考えてみよう。ディープブルーは人間が書いたただのプログラムなのだ。
カスパロフが感じた「知性」も、「最高点の手を採用するが、もし深読みするほど点数が下がるなら採用しない」
というアルゴリズム(処理手順)に過ぎないのだ。
ディープブルーの驚異的な計算力をもってしても、時間内に20手先を読み切ることはできない。
それをおぎなうための補助機能にすぎないのだ。
もちろん、これは「知性」ではない。似て非なるものだ。ところが、カスパロフはこれを「知性」と感じた。
これは、高度な技術は魔法と区別がつかないことを示唆している。結局、カスパロフは、このときの衝撃から立ち上がることができなかった。
こうして、ディープブルーは歴史的第2局を制したのである。
第3、4、5局とドロー、そして第6局でついにカスパロフは敗北する。2勝1敗3引分、ディープブルーの歴史的勝利であった。
コメント一覧
それがバグだからこそロマンを感じる
知ってる。
ディープブルー「勝ったぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
これがコンピュータ自身で出来ない限りは本当の意味での知性とは言えないと思う。
コンピュータとプログラマーチーム、合わせて一つの知性体と考えるんよ。
京でチェスをしたらどうなるんだろ。