11歳、修学旅行の夜

コピペ投稿者:名無しさん  投稿者ID:fb94se+l
コピペ投稿日時:
修学旅行は何が楽しいかと言うと、「夜」である。
夜、お座敷に友達と一緒に寝るのがとにかく楽しい。
枕投げ、プロレスごっこに興じるのはもっぱら男子で、女子の場合は噂話と告白タイム。
ゲームに負けたら、クラスの好きな男子の名前を言わなきゃならないとかそういうの。

同じ部屋の女子は別の部屋に集まって騒いでいたが、私とSさんは騒ぐのが苦手だったので参加しなかった。
Sさんとは席が隣同士で少し仲良くなった間柄。
とても小柄で大人しいけど時々ユニークなことを言う彼女が、私は結構好きだった。

みんなが戻ってきてまたひとしきりペチャクチャやっているうち、
一人眠り、二人眠りしてだんだん静かになり、やがて軽い寝息のほかは何も聞こえなくなった時、

「オオノさん、まだ起きてる?」

と隣で寝ていたSさんが突然囁いた。

「起きてるよ」

「ちょっとお話しない?」

「いいよ」

それから彼女は小さな声で、綿々と告白を始めた。
私へのではなく、クラスのF君への思いを。

F君はあまり目立たない男子だったが、身だしなみがとてもよかった。
手を洗った後、いつもきちんとアイロンのかかった真っ白なハンカチをポケットから出す男の子。
それが私のF君の印象。

Sさんは、そういうF君が好きで好きでたまらないが、告白は恥ずかしくてできないのである。
でも誰かに言いたい。そして聞いてもらいたい。

「F君ってよく見るとハンサムだよね。F君って時々面白いこと言うよね。F君ってカッコいいと思わない?」

「そうだね」

「ねえ、私とF君ってどう思う?」

「結構お似合いだと思う」

「ほんと?ほんとにそう思う?」

「うん、思う。背もつりあってるし」

だいたいそんなような他愛もない会話をヒソヒソ声でした。

それからしばらしくして、Sさんはおずおずと

「オオノさん、ちょっと手貸して」

と囁いた。何だろうと思いながら布団の中から右手を差し出すと、彼女は私の掌をそっと取って

「これ、F君の手だと思っていい?」

と訊いた。

「いいよ」

私は11歳にして、Sさんの幼い欲望を直感的に理解した。
好きな男子の手に触りたい、手をつなぎたいという気持ち。
私はSさんの恋心に半ば同調していた。

そんなにF君が好きなのか。
でも言えないのね。そりゃさぞせつないだろうね。
この際、私の手をF君の手だと思って好きなようにしなさい。

私は右手を差し出したまま上を向いて、暗い天井を眺めていた。
Sさんは私の掌を優しく両手で包んで撫でた。
私はピアノを習っていたから比較的手が大きい。
たぶん超小柄なSさんにとってみたら、男の子の手だ。

彼女は私の手を撫でながら、

「F君‥‥F君‥‥」

と泣き出しそうな嬉しそうな声で呟いた。彼女の息が私の掌にかかった。

それから私は、なんか柔らかくてしっとりした感触を手の甲に感じた。
それはSさんの唇だった。
Sさんが私の手にキスしてる。それも何回も。

「F君‥‥好き」

チュッという微かな音。

急速に複雑な気持ちになってきた。
彼女の欲望を理解したと思っていたが、事態は想像以上のところに進展している。

別に嫌なわけじゃないけども。
私の手は今F君の手だから、別に私が困ることはないんだけども。
ただものすごく落ち着かない。Sさんの唾液がついたところが、なんかスースーする。
でもここで何か言ったり動いたりしたら、余計に変なことになるような気がする。

私は天井を見たままじっとしていた。
Sさんが私の手を自分の胸の真ん中あたりに押し当てた時も、息を殺していた。

30秒後か1分後かわからないが、彼女は小さい溜息をついて、

「ありがとう」

と言って手を離してくれた。
私は引っ込めた手をこっそりシーツに擦りつけて、布団の中でパタパタ振った。
そうしないと、自分の手に戻らないような気がして。

ちらっとSさんの方を見ると、戸の隙間からの光で、彼女の目を閉じた満足気な横顔がぼんやり見えた。

「これで私、F君の夢見られそう」

「ん」

「オオノさんも、私がいい夢見られるように祈っててくれる?」

「ん」

「うれしい。F君、おやすみ」

「‥‥おやすみ」

Sさんは、翌日は何事もなかったかのようなケロッとした顔をしていた。
だから私も何事もなかった顔をした。

自分を慰めたいがために、他人を利用した彼女に対して、腹は立たなかったし嫌悪感もなかった。
私はそれをわかって「手を貸した」のだから。

それより、普段とても地味なSさんの、なんか大人の女の人のような恋心の激しさとやってることのギャップを、
理解しようと努めるので精一杯だった。そうしないと、なんか気持ちが片付かない。
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コメント一覧

1  名前::2013/04/06(土) 01:20:00  ID:FQ5+PO8Z PCからの投稿
百合展開と思ったのにクソが
5 イイ!コメント
2  名前::2013/04/06(土) 01:21:04  ID:Tg3p7OS6 スマートフォンからの投稿
えっ?終わり?
2 イイ!コメント
3  名前::2013/04/06(土) 01:23:17  ID:xj+W5/Ds PCからの投稿
似たような体験だが、俺は80過ぎのイカレたBBAに
「ねぇ、握手してよ」
って言われて返事する前に左手を取られ、唖然としてたらそのBBA

俺 の 手 を 口 元 に 持 っ て 行 っ て 舐 め や が り ま し た。

その後近くのトイレの洗面台で手を洗いまくり。
っていうか、一ヶ月くらい左手を使ってパンなんかの食いものを食べられなかった(BBAに舐められた左手が口元に近づくことが嫌だった)。

もうホントトラウマ体験。あー、嫌なこと思い出した・・・。
6 イイ!コメント
4  名前::2013/04/06(土) 01:33:37  ID:YgxeOnNg スマートフォンからの投稿
この文章はとても面白い。良い。
18 イイ!コメント
5  名前::2013/04/06(土) 01:37:31  ID:nbClPKB8 PCからの投稿
Sさんはストーカー気質だな・・・
こんなに思われてるF君は幸せなのか、どうなんだ
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6  名前::2013/04/06(土) 01:37:41  ID:LRUv3BMo PCからの投稿
文章がいいねえ
16 イイ!コメント
7  名前::2013/04/06(土) 01:43:20  ID:dNLPoimk 携帯からの投稿
百合の花なんざ散らせ散らせ
3 イイ!コメント
8  名前::2013/04/06(土) 01:55:34  ID:duM2IPkf 携帯からの投稿
ちびまる子ちゃんの冬田さんで再生されたw
0 イイ!コメント
9  名前::2013/04/06(土) 02:03:07  ID:SP0C946f 携帯からの投稿
実は同じ部屋のクラスメイトが数人起きていて、翌朝以降冷やかされたりイジメられたりする展開だと思ったんだが、なんだよこの終わり方
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10  名前::2013/04/06(土) 02:05:10  ID:j+TcytVE スマートフォンからの投稿
その手をマンコへ持っていきオナニーか?なんて思った俺の心は汚れています。
26 イイ!コメント
11  名前::2013/04/06(土) 02:29:43  ID:B4KVcvKG スマートフォンからの投稿
※10 おまえはおれか
0 イイ!コメント
12  名前::2013/04/06(土) 02:31:59  ID:FowtyUf2 携帯からの投稿
米10
口→胸と来たら次はマンコだもんな
0 イイ!コメント
13  名前::2013/04/06(土) 03:00:37  ID:vlUPq8Yf 携帯からの投稿
『手を貸す』クククク…
0 イイ!コメント
14  名前::2013/04/06(土) 07:11:57  ID:40wm5mjy 携帯からの投稿
一種の百合
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15  名前::2013/04/06(土) 07:30:38  ID:Td9lL+QT PCからの投稿
百合はいいねぇ
リリンの生み出した文化の極みだよ
4 イイ!コメント
16  名前::2013/04/06(土) 08:53:01  ID:T6fJJwR6 携帯からの投稿
ふぅ・・・
0 イイ!コメント
17  名前::2013/04/06(土) 09:25:19  ID:8L3sdUXk PCからの投稿
なんだか良い話だなあ
山田詠美あたりが書いた短編小説みたい
1 イイ!コメント
18  名前::2013/04/06(土) 17:00:31  ID:XqiJjxwA PCからの投稿
※10
俺の心もばっちり汚れてます
0 イイ!コメント
19  名前::2013/04/08(月) 01:27:20  ID:5QsjAGAD 携帯からの投稿
米15
お前ホモじゃねーか
0 イイ!コメント
 

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