拙くもひたむきに

コピペ投稿者:名無しさん  投稿者ID:4uE4rqKb
コピペ投稿日時:
558 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2010/03/10(水) 23:23:10 ID:UvpuqCrj
鳥見の新助の忠勤
関ヶ原の勝利の余韻も覚めやらぬ慶長十三年頃の話である
駿府の城下に鷹匠の下役で「お鳥見」を勤める大岩新助という五十石取りの若い小者がいた
この新助、大変な大酒飲みなのだが、酒癖が極めて悪く、いつもいつも泥酔しては
半裸で全身泥だらけになって大手門の前で大の字になっている
そんな新助を町の衆らが戸板に乗せて、ワッショイワッショイ担いで
神輿のように部屋に戻してやるのが、城下町の名物になっている有り様であった

それだけの酒癖ならかわいいものなのだが、時折新助は酒を飲むと
女の行水を覗きに行くという悪癖があり、これがどうしても直らなかった
この時代のことだから、あまり問題にはならなかったが、それでもやはり
人の屋敷をこっそり覗き込み、女のあられもない姿を見つめているのはあまり誉められる行いではない
ある日とうとう武家の屋敷を覗きこんでいる所を同心に見咎められてしまった
本来なら召し放ち、悪ければ屋敷の主人に斬られてもおかしくない所だったが
新助は、口笛一つで五十羽百羽の鳥を集められる天才的な鳥刺しだったから
家康に庇われて、街道筋から伊勢路、美濃路にかけて、
鳥見をしながら三年ほど廻ってこいと命じられた。体のいい追放だった
百姓の小倅であった自分が、二本差しの身分となり禄を得ているのも
主君である家康の寵愛があってのことであるというのに
自分はそんな家康の名前に泥を塗ってしまった
酒が入らなければ基本的に真面目で気弱な新助は恥入った
そしてどうにか汚名を返上できぬものかと考えた
しかし元々が鳥刺しの腕一本で取り立てられ、無学文盲の新助には
ろくろくその恩に報いる手段も考えつかなかった

新助は鳥見の仕事をし、街道を行き来しながら寺に通い、読み書きを習い始めた
寺に通う間はあまり大酒も飲めなかったから、悪癖は鳴りをひそめた
数年の手習いで、あまり上手いものではないが、文の一つもしたためられるようになり
行儀などもめっきり良くなった新助は、三年の勤めを終えて駿府へ帰った
新助の成長を上司も家康も大変に喜んでくれた
読み書きを覚えた新助には仕事が増えたが、喜んでどんな仕事もしたから
ますます家康に可愛がられ、更に十石を授かった

そうして数年経った頃大坂の役が起こった
ここで働きを見せれば、大御所様の恩に報いることができる
新助も鳥刺しの道具と槍を持って出陣した
奇妙な姿であったから、皆はそれを笑ったが家康は少し笑っただけで何も言わなかった
必ず手柄をたてますると意気込む新助を、家康は笑って送り出した

意気込みは一人前だが、鳥刺しの腕は良くても新助の槍の腕はからっきし
それでも勇敢に戦って、彼は茶臼山の戦いで華々しく討ち死にした。三十四歳だった
知らせを聞いた家康は目を閉じて俯き、しばし無言であったという
新助の最期は駿府の街にも伝えられ、人々はその見事な最期を口々に言い伝えたのだった
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コメント一覧

1  名前::2013/06/19(水) 07:20:38  ID:XQrFe3pn 携帯からの投稿
人は人の心で生き続けるもの
将軍はじめ多くの人の心に残った彼は幸せだ
9 イイ!コメント
2  名前::2013/06/19(水) 08:13:37  ID:AmX0aHxA PCからの投稿
そうして時代が下り、彼が生まれ変わったのが草薙か
0 イイ!コメント
3  名前::2013/06/19(水) 08:31:09  ID:JJfpHlFL PCからの投稿
島田紳助 で再現するとそんなに感動しない
1 イイ!コメント
4  名前::2013/06/19(水) 09:10:48  ID:2l4a1vPj 携帯からの投稿
事跡を重ねているだけの文章なのに新助の人柄が良くわかる
16 イイ!コメント
5  名前::2013/06/19(水) 10:10:30  ID:MNy5srXF PCからの投稿
愚直というのだ
0 イイ!コメント
6  名前::2013/06/19(水) 10:28:05  ID:AmX0aHxA PCからの投稿
※5
性根が腐ってる奴より愚直な奴の方が良い
5 イイ!コメント
7  名前::2013/06/19(水) 10:43:35  ID:n1UtOIby 携帯からの投稿
馬鹿が分不相応に調子に乗って死んだだけの話。
6 イイ!コメント
8  名前::2013/06/19(水) 11:47:46  ID:Uyaa+Ijv PCからの投稿
だけ、というのは酷な事ですな
その程度の皮相な見識は誰にでもできまっせ
ところで笑って送り出した家康はどういうつもりだったんやろね…
0 イイ!コメント
9  名前::2013/06/19(水) 13:08:48  ID:2l4a1vPj 携帯からの投稿
素晴らしく業績を残した訳ではないけれども家康の為に一生懸命自分を磨いている様は共感出来る
こういう風に頑張ってる人はいっぱいいると思うんだ
だからこそ末路が切なく感じるし故郷に錦を飾る事が出来て良かったねと思う
5 イイ!コメント
10  名前::2013/06/19(水) 17:22:41  ID:f+GJ4xfZ PCからの投稿
「鳥刺し踊り」でググると、酔ってても酔ってなくても大差ないんじゃないかと思う。
0 イイ!コメント
11  名前::2013/06/19(水) 19:14:17  ID:RdLnyW4B スマートフォンからの投稿
※8

気持ちは嬉しいけど、恐らく討ち死には避けられないと思ったんじゃない?

ただ命を懸けて功を立てようとする家来を止めることは残酷な行いだし、いろいろな思いが複雑に絡み合った表情だったんだろうね
10 イイ!コメント
 

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