コピペ運動会

幼い頃に父が亡くなり、母は再婚もせずに俺を育ててくれた。学もなく、技術もなかった母は、個人商店の手伝いみたいな仕事で生計を立てていた。
それでも当時住んでいた土地は、まだ人情が残っていたので、何とか母子二人で質素に暮らしていけた。
娯楽をする余裕なんてなく、日曜日は母の手作りの弁当を持って、近所の河原とかに遊びに行っていた。給料をもらった次の日曜日には、クリームパンとコーラを買ってくれた。
ある日、母が勤め先からプロ野球のチケットを2枚もらってきた。
俺は生まれて初めてのプロ野球観戦、しかも大好きな阪神戦に興奮し、母はいつもより少しだけ豪華な弁当を作ってくれた。
張り切って縦じまの野球帽をかぶり、野球場に向かう。
野球場に着き、チケットを見せて入ろうとすると、係員に止められた。
母がもらったのは招待券ではなく優待券だった。
チケット売り場で一人1000円ずつ払ってチケットを買わなければいけないと言われて困惑していると、
俺らの後ろに並んでいたいかついおっさんがでかい声で「はよせぇやぁ！」と叫んだ。
おっさんは「なんや、チケット間違っとんのやな！わしが足らん分だしたるさかいにちゃっちゃとやってんか！」と俺と母に2000円を押し付けた。
さすがにそれは受け取れないと母が断るが、おっさんの変な迫力に負けて結局入場することになった。
自由席でおっさんの隣に座り、あれこれ話しながら観戦していると
おっさんは先日奥さんに先立たれて子供もいないらしい。だからついおせっかいを焼いたと言った。
俺はおっさんに応援歌やチャンテを教えてもらい、一緒に叫んだ。

阪神は負けたが、その後もおっさんと連絡を取り合うようになり、
この春、母がそのおっさんと再婚することになったので記念カキコ。