バイト入りたての頃、客に枕やら歯ブラシやらを持っていくことになった
客に届けたあと整頓してたら、後ろでガガタッと何か音がした
ベッドの上の絵が何かの拍子で落ちたみたいだった。
よく見ると絵がかかってた壁の部分に、茶色というか黒と言うか、染みっぽいのがあったんだよね。
汚れを隠すために架けてんのかなって思いながら、絵を手に取ってみると、裏面にお札が貼ってあるの。
白くて細い女の人が馬の上に立って、踊っているような絵。
元に戻して部屋を出たんだけど、あれが全ての始まりだった。
一ヶ月ほど経った日、夜勤の番をしてると客がフロントに来た。
深夜2時。
普通、この時間に客なんて来ないさ。
用があっても電話してくるから、直接来るなんて事も珍しい。
そして「部屋を変えてもらえませんか」って言うのね。
新しい部屋のカードキー作って渡したんだけど、荷物運ぶからついてきてくれって。
荷物お持ちしましょうかって言っても荷物は自分で持ってた。
付いてきた意味ないじゃんって思ったんだけど、部屋入るとき先に入ってくれって言うし、なんか変な感じだった。
部屋に入ったときに、なんか壁が気になって見ると、いつぞやの絵が飾ってあって、「ああこの部屋か」と思い出した。
部屋変更履歴を見ると、三日前も、そのまた二日前も、さっきの517号室から部屋変えてくれって要望が出てる。
社員の間でも夜のクレームやら部屋変更が増えてきた事が話題になってきてたらしい。
そんなある日、バイト行って引き継ぎ帳見てびっくり。
「517号室の絵の裏側のお札剥がれてます、誰か知りませんか?」
うわ、お札剥がした客いんのかよ、って思ってたが、社員とその話をしているときに、
二ヶ月ほど前に、絵が落ちてきた事を話した。
ある夜、517の絵の裏がどうなってるのか興味沸いてきたので、空室なのを確認して見に行く事にした。
綺麗にメイクされたベッドの上にはパジャマ、ベッドの頭ごしの上には、例の絵が架けてあった。
絵を外すと、隠れていた壁がドス黒く変色していた。
前に染みを見つけたときよりも明らかに広がってる。
視線を絵の裏側に移した。
お札の下半分が、引きちぎられたように無くなっている。
これカビだと自分を納得させた。
そしてとうとう、「517は会員客には販売しないように」と指示が下った。
引き継ぎ帳の下には「××さん○日に来ます」。
××さんって誰ですか?と夕方に、仲の良かった女性社員に聞いてみると、神社か何かの方だとか・・・
えっ、それよりカビの除去が先じゃないんですかってつい言ってしまったら、「壁を見たの?」って問い詰められた。
どうやらあれはカビじゃないらしい、今も少しずつ広がってるって教えてくれた。
ゾワゾワッと背筋が震え上がった。
やっすいホテルなんで、517もフル稼動。
しかし確実に来る客からのクレーム・・・決まって一人で泊まった客からだった。
××さんが来る前日、ついに怒鳴り込んで来た客がいた。
ポットと枕に髪の毛が入ってる、付いてると言う。
回収したポットからは長めの髪の毛が確かに出てきた。
枕には数本の髪の毛。
普通なら清掃のオバちゃんが大目玉喰らうはずなんだけど、なぜかお咎めなし。
社員の雰囲気も変。
とうとう火曜に××さん到着。
お祓いで効果あるんだろうか、と思いつつ、今日バイトに来たら、事務所の裏に例の絵が置いてある。
取り替えらしい・・・どうすんだこれ
コメント一覧
怖い話は好きなんかw
こえーって
ワロタw
意外とカワイイなw
媚びんな死ね蛆虫
よく考えるとシュールな絵柄だ
人気に僻むなよ…
※12
死ね
バーモントドリンク入りま〜す
そこに何故か自分含めた従業員数人も同席するように言われた。
絵を外して壁の染みを見てしまったから、らしい。
××さんが壁の前に座って何か唱え出してしばらく。
女のすすり泣くような声が聞こえてきて、誰も動いていないのにカタカタ物音がする。
すると急に××さんが奇声をあげ、その場に倒れ込んだ。
それで自分達もパニックになってしまって、逃げようと腰を浮かせた時、誰かが部屋に飛び込んできた。
寺生まれのTさんだった。
Tさんが壁に向かって「正体を現せ!」と叫ぶと、壁の染みから女の姿をした影が浮かび上がってきた。
長い髪を振り乱して、凄い形相でこちらを睨んでいた。
「破ァ!」とTさんが叫んだ。女の影が薄れるように消えていった。
「あれは男に捨てられてこの部屋で自殺した哀れな女の亡霊だな・・・。しかしもう現れることもないだろう」
そう言ってTさんは気を失ったままの××さんを引き摺って去って行った。
寺生まれってスゴイ。
ごめん。Tさん使うなら正直もうちょっとひねりが欲しかった。
その絵の中から馬装したTさんとかだろ?
その絵の中から馬装したTさんとかだろ?