280 :ウイング :03/07/04 14:55 ID:oy7ynNKQ
僕はその当時21歳。
一つ下の彼女は20歳だった。
15日に成人式を迎えた振り袖姿の彼女と写真を撮った。
16日の夜「今日現像あがってきたから明日写真もって行くわ、おやすみ」
それが彼女との最後の会話になってしまった。
僕の家は揺れは大きかったが周辺で倒壊や火事などは全くなく、暫くすると電気も回復し「ずいぶん揺れたな」としか思わなかった。
何気なくテレビをつけ、倒れた本棚を片付けていたら家が倒壊し火が燃え盛っている彼女の自宅周辺の映像が流れた。
頭の中が真っ白になった。
僕は原付に飛び乗り彼女の家に向かった。
信号は消え、道路は陥没、隆起し崩れた家・塀が道をふさぎ大渋滞。
その間をすり抜けなんとか彼女の自宅前にたどり着いた。
僕は凍りついた。
15日にその前で彼女と別れたその家が姿形も無く崩れ落ちていた・・・
彼女の名前を叫びながら周辺を探しても姿はない。
するとかすかに「助けて」と声が聞こえたような気がした。
周辺では被災を免れた人達が僕と同じように行方のわからない人達を探していた。
「かすかな声や物音が聞こえるかもしれへんからみなさん少しの間静かにして下さい」
僕がそうお願いするとわずかな声、物音も聞き逃さまいとみなさん耳を澄ませてくれた。
そこへ静寂を切り裂く轟音が空から聞こえた。
マスコミ・テレビ局のヘリコプターだった。
おなじヘリコプターが頭上を何度も往復・旋回した。
聞こえるのはヘリコプターの爆音だけ。
こんな中でかすかな声も物音も聞こえるわけがない。
僕達はヘリコプターが去っていくのを待ち続けた、しかしその数は減るどころか増えていくばっかり。
281 :ウイング :03/07/04 15:14 ID:oy7ynNKQ
お前らは上から見てるだけで地上の悲惨な状態がわかってるのか?
一人でもたくさんの人達を助けようとしている人達の邪魔をしているのか?
そんな言葉ばかり頭に浮かんだ。
重機のないなか、人海戦術で掘り起こしていく他なかった。
そんな方法で救出作業が進むはずがない。
梁を動かすだけで一日仕事。
彼女の変わり果てた姿を見つけたのは地震発生当日から五日後だった。
泣いた、泣き続けた。
一週間前に艶やかな振り袖姿を見せてくれた彼女がこんな事になるとは・・・
それ以来マスコミは信じていない。
もしヘリコプターがこなかったら助けられたんじゃないか?
今でもそう思い続けている。