コピペ運動会

突然高速で動くことにより、その場には残像が残るという。
そういう力をゲットしたいのです僕は。そうすれば、こんな高校生活が送れるはずなのです。
僕はこんな甘酸っぱい残像恋物語をしてみたいのです。

＊＊＊

「おばさま、おはようございます！」
「あら、サクラちゃん。ごめんねぇ。いつも迎えに来てくれてるのに洋介のバカ、まだ寝てるのよ。あの子ったら高校生にもなって・・・」
「慣れてますから大丈夫でーす！」

幼馴染の洋介を起すのはいつもあたしの仕事。
洋介の部屋に入ると、おばさまの言った通り洋介は布団にくるまってた。

「ほら！洋介！早く起きないと遅刻するわよ！」
「なんだ、サクラか・・・ううーん。もうちょっと・・・」
「ダメ！起きなさい！！」

そう言って洋介の布団を引っぺがすと、洋介は変なところをおっきくしてた。

「ちょ、ちょっとあんたどこおっきくしてるのよ！！」

洋介の股間を思いっきりけり下ろすと、やわらかい布団の感触がした。

「仕方ないだろ、朝なんだから」

後ろから洋介の声がした。

「…っ残像！？」


＊＊＊

いつもの通学路。洋介と一緒に歩けるこの時間がすごく楽しい。
それだけでも洋介と同じ高校に行ったかいがあるように思える。
隣で洋介があくびをする。かわいい顔。普段学校では見せない顔を、あたしの前でだけしてくれる。

すると突然、目の前で道路に子供が飛び出してきた。

「あぶな・・・」

あたしがそう言うより早く、洋介は飛び出していた。
子供を抱き上げて道路から出ようとした、その瞬間。
トラックが洋介に向かって突っ込んできた。洋介とトラックが重なる。

目の前が真っ暗になった。どうして？洋介が？さっきまで隣であくびしてたのに。
なんで、こんなことに。あたし、洋介がいなくちゃ生きていけない。

「坊主、危ないから急に飛び出しちゃだめだぞ。」

後ろから洋介の声がした。

「…っ残像！？」

＊＊＊

授業中、隣の席で寝てる洋介を見る。無防備な寝顔。
どうしよう。キスしたい。あたしこんな洋介のこと好きだ。

「・・・それじゃあ、問２を洋介。前に出て解いてみろ。」

洋介は全然気付かずに寝てる。やばい。起こしてあげなくちゃ。

「ちょ、ちょっと洋介！あんた指されてるって！」
「・・・よって、x=2となります。」

黒板の方から洋介の声がした。

「…っ残像！？」


＊＊＊

部活の後の帰り道。暗い道。
でも、いつも同じくらいの時間に終わるから、洋介と一緒に帰れる。でも。

でも、いつまでこんな関係が続くんだろう。いつか勇気を出さなくちゃいけないのもわかってる。
でも、その勇気を出すってことは今の関係を壊すってことと同じ意味。
このまま待ってても進展はない。でも、踏みだしたら壊れるかもしれない。

「あ、あたしそこの踏切まででいいよ。」
「おー。んじゃ、また明日な。」

あたしが信号が鳴り始めた踏切を急ぎ足でくぐりぬけると、後ろから洋介が叫んだ。

「サクラ！」

振り返ると、真面目な顔の洋介。

「おれ、ずっと考えてたんだけどさ。ちょっと聞いて欲しい。」

え、なんの話するつもり？信号は鳴り続けている。

「こんな話すると、おれたちの関係は崩れちゃうかもしれない。でもおれ、我慢できなくて。
　一歩踏み出してみることにした。おれ、ほんとはずっと前からお前のこと・・・」

その瞬間、電車が目の前を通り抜ける。なに、洋介。なにを言うの？
あたしになにを伝えてくれるの？あたし、期待してもいいの？

電車が過ぎるとそこには笑顔の洋介が立っていた。あたしは踏切に背を向けて言う。

「あたしも、洋介のこと、すき。だいすき。」

あたしの背後に回り込んでいた洋介はびっくりしたように言う。

「お前・・・まさかおれの動きが・・・」
「見えるはずないでしょ。」

あたしの顔は涙でぐちゃぐちゃだった。

「ただ、あんたの考えてることくらい、わかるわよ。」

洋介が手を広げる。あたしは洋介の胸にもたれかかる。
でも、あたしはそのまま地面に倒れ込んだ。再度あたしの背後に回り込んだ洋介は言う。

「残像だ。」

＊＊＊