僕がまだ小さかった頃の出来事を思い起こしてみると、
姉貴に悪気があったのか無かったのかはわからないが、
今となってみれば、あれはちょっと酷かったのではないかと思うことがある。
それぞれ、姉貴は中学の、僕は小学の夏休みに突入して、
まだ数日しか経たない心爽やかな最初の週のこと。
姉貴はエアコンの効いた快適な部屋でテレビゲームをしていて、
僕はそれを後ろから眺めてルールもわからないなりに楽しんでいた。
手が離せない姉貴に命じられ、台所からポテチとコーラを取ってくると、
姉貴は僕から受け取ったポテチを広げ、それをつまみながらテレビゲームを続けるのだが、
指先に付くポテチの油でコントローラが汚れてしまうのが気になるらしかった。
最初はシャツの裾なんかで指先を拭っていた姉貴だが、
妙案が浮かんだように「あっ!そうだ!」と声を上げると、
隣でポテチとコーラのおこぼれにあずかっていた僕へ向かい、親指と人差し指を突き出して言った。
「ほら、コンソメ味あげる」
当時から僕はポテチを何枚かつまんだ後の、
指先に濃縮された高濃度のコンソメを味わうのが好きで、
ポテチを食べるときはなるべく指先に多く味が付くようにと
必要以上に強くつまんでから口へ運ぶなどしていたくらいのものだったから、
そんなコツコツと指先に蓄えねば味わえぬコンソメを弟へ譲ってくれるなんて、
姉貴はなんて良い人なんだ……と、このときは姉の愛だと素直に受け止め感動していた。
それから僕は、姉貴がポテチをつまむたびに差し出す指先から
油分とコンソメ分を綺麗になめとり続け、
それが結果的に姉貴の指先とコントローラの清潔を保つことになったのであった。
だけど今となってみれば、あれはちょっと酷かったのではないかと思う。
あれから結構な年月が経ったけれど、
未だに姉貴は何かつまみ食いしたあとの親指と人差し指を、
擦り合わせるようにしてこちらへ差し出し
「ニヒヒ」と笑ってみせることがある。
大抵の場合コンソメ味がするのが不思議。
コメント一覧
馬鹿なのか、変態なのか
まじか
キチガイ姉弟めが。
君にはまだ涎先生の免疫が無いようだね
そのままお幸せに
読んで損した死ね