408 名前:人間七七四年[sage] 投稿日:2009/07/14(火) 12:18:05 ID:Prlc8XVo
田村清顕という武将がいた。あの伊達政宗の妻、愛姫の父親と言えばお分かりであろうか?
この田村清顕が、天正十四年(1586)、突然に死去した。
後嗣の無いままの死であり、死因が様々に取りざたされたが、この清顕の死から
ひと月とたたないうちに、彼の領地三春の街中に、妖怪が出るとの噂が立った。
皆不気味に思っていたところ、翌天正十五年の正月には、領民の女が深夜、
何者かに惨殺されると言う事件が起こった。
三春の人々は恐れおののき、世継ぎのないまま死に、この世に思いを残した
清顕の亡魂の仕業ではないか?と、噂しあった。
そしてそれからは日が暮れると、出歩く者もいなくなった。
これに憤った田村家のある侍が、自分がその妖怪を退治してくれようと、夜、密かに
見回りをした。ある晩、彼はついに、町内の家に押し入ろうとする4,5体の妖怪を発見し、
これに斬りかかった。
ところが、この侍が切りかかると妖怪たちはたちまち降参をする。
何事かとよく見ると、その妖怪達は、化け物の扮装をした強盗であったそうだ。
女の惨殺も、彼らの仕業であった。
彼らが捕縛された事により、三春の妖怪騒ぎは、ピタリと止んだのだと言う。
いつの世も、本当に怖いのは化け物ではなく人間である。と言うお話。