やい、とかげ 舟崎靖子
ぼくは自転車をなくした。だれのせいでもない。ぼくが
悪い。
自転車のかぎをかけないで、文ぼう具屋の前に止めてお
いた。
ろうせきを買って店から出てきたら、自転車はどこにも
ない。手品みたいに真昼の道路から消えてしまった。
「だらしがないったらありゃしない。」
家に帰って母さんに話したら、母さんはかんかんになっ
ておこった。
「物をなくしたからって、すぐ新しい物を買ってもらえる
と思ったら、大まちがいよ。」
母さんは、それきり、自転車の話はしなくなった。
次の日、学校から帰ると、いつものようにのぶちゃんが
遊びに来た。
いつものように自転車に乗ってきた。
いつものように自転車に乗ったまま、ベルを鳴らしてぼ
くをよんだ。
ぼくは、いつものようにげんかんの戸を開けて出ていっ
た。
「東町公園へ野球に行くよ。早く、早く!」
けれど、ぼくは、のぶちゃんといっしょに行かなかった。
行かなかったのではなくて、行けなかった。
自転車の二人乗りは学校で禁止されていたし、東町公園
まで歩いていくには一時間かかった。
「じゃあな。」
のぶちゃんは、行ってしまった。
ぼくは、自転車のベルを鳴らして角を曲がるのぶちゃん
を、見送った。
お日様は、ぼくの頭の真上にある。一日は、やっと半分
ぼくは自転車をなくした。だれのせいでもない。ぼくが
悪い。
自転車のかぎをかけないで、文ぼう具屋の前に止めてお
いた。
ろうせきを買って店から出てきたら、自転車はどこにも
ない。手品みたいに真昼の道路から消えてしまった。
「だらしがないったらありゃしない。」
家に帰って母さんに話したら、母さんはかんかんになっ
ておこった。
「物をなくしたからって、すぐ新しい物を買ってもらえる
と思ったら、大まちがいよ。」
母さんは、それきり、自転車の話はしなくなった。
次の日、学校から帰ると、いつものようにのぶちゃんが
遊びに来た。
いつものように自転車に乗ってきた。
いつものように自転車に乗ったまま、ベルを鳴らしてぼ
くをよんだ。
ぼくは、いつものようにげんかんの戸を開けて出ていっ
た。
「東町公園へ野球に行くよ。早く、早く!」
けれど、ぼくは、のぶちゃんといっしょに行かなかった。
行かなかったのではなくて、行けなかった。
自転車の二人乗りは学校で禁止されていたし、東町公園
まで歩いていくには一時間かかった。
「じゃあな。」
のぶちゃんは、行ってしまった。
ぼくは、自転車のベルを鳴らして角を曲がるのぶちゃん
を、見送った。
お日様は、ぼくの頭の真上にある。一日は、やっと半分
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