210 名前:165[sage] 投稿日:2008/02/29(金) 07:51:10 ID:y5aGk3HI
レスをくれた皆さんありがとうございます。>>191さん、こちらこそ、すみません。
多忙により、しばらく書けませんでした。
この話も考証等はしていません。ご考慮下さい。
秀吉と牛蒡(1)
羽柴秀吉が関白に就任し、豊臣秀吉と名乗り始めた
頃の話である。人臣の位を窮めた秀吉に、各国の大名
や豪商、有力者達が祝いの品を贈っていた。
その頃、秀吉の故郷である、尾張中村でも秀吉に祝
いの品を贈ろうと、農民達が話し合っていた。しかし
当時の尾張中村は寒村であり、特に名産も無く、農民
達は何を贈り物とするか決めあぐねていた。ある者が
言った。
「そういえば、秀吉様が墨俣に城を建てた時や、長浜
に城をいただいた時、この中村の牛蒡をお祝いとして
差し上げたら、たいそう喜ばれた。今度も牛蒡を贈っ
たら良いのでは?」
皆、(関白さまに牛蒡など…)と戸惑ったが、他に換
わる金品は無い。せめて丹精した牛蒡をと、農民達は
選りすぐった牛蒡を持ち寄り、村の代表者に託した。
211 名前:165[sage] 投稿日:2008/02/29(金) 08:21:03 ID:y5aGk3HI
秀吉と牛蒡(2)大坂城に着いた尾張中村の一行は驚いた。城の大きさ、
賑わう人々、そして城に続く長い行列。皆、立派な格好を
し、金や刀や絹織物、中には精悍な駿馬を携えている者も
いた。すべて秀吉への贈り物である。みすぼらしい格好で
行列の端に並ぶ、中村の農民。そこに羽柴秀長の一行が通
りかかった。秀長は農民達の中に、見知った顔があった。
「おお!中村の者達ではないか、久しいのお!どうした、
なぜ大坂に?」
農民達は秀長に、秀吉さまに牛蒡を贈ろうと思ったが、
あまりにみすぼらしいので、貴方に預けて早々に帰りたい、
と伝えた。秀長は言った。
「ばかもの。はるばる尾張中村からの使者を無碍に帰せる
ものか。よし、わしと共に城に来い。」
秀長は農民達を連れ、城に入った。農民達は城の台所で待つ
よう言われ、しばらく待っていた。
212 名前:165[sage] 投稿日:2008/02/29(金) 08:48:51 ID:y5aGk3HI
秀吉と牛蒡(3)台所の奥からドカドカと足音が近づいてきた。それは
秀吉であった。秀吉は駆けるように農民に近寄り、喜色
満面で言った。
「中村の者達、よく来た、よく来てくれた!嬉しいぞ!
それに、また牛蒡を持って来てくれたのだろう?ありが
たい、まことにありがたい。」
農民一人一人の手を取り、感謝する秀吉。望外の歓待
を受け、農民達も安堵した。酒宴が始まり、秀吉や秀長、
おねや母のなかも加わって、しばし時を忘れ賑わった。
あくる日、秀吉は帰ろうとする農民達に言った。
「お前達を手ぶらで帰す訳にはいかん。土産として、尾張
中村の年貢を永年免除とする。どうだ?土産になるか?」
農民達は秀吉に感謝歓喜し、意気揚揚と尾張中村へと帰った。
213 名前:165[sage] 投稿日:2008/02/29(金) 09:25:03 ID:y5aGk3HI
秀吉と牛蒡(4)それから数年経った。年貢が免除された尾張中村では、
農民達は裕福な生活を送っていた。ある者は家を豪華な
屋敷に造り替え、ある者は蓄財し、商いを始めた。
皆が再び集まり話し合った。
「わしらがこんな贅沢に暮らせるのも秀吉様のおかげだ。
お礼として何か贈ろう。皆で金を出し合って、刀や駿馬
を取り寄せよう。」
こうして農民達は立派な刀や精悍な駿馬を携え、再び大
坂城へ赴いた。
あの時のように、城の台所で待つ農民達。駆けんで来
る秀吉。農民たちは言った。
「秀吉さまのおかげで、我々も豊かに暮らせる事が出来
ます。立派な名刀と駿馬を買える余裕も出来ました。ど
うぞお納めください。」
すると秀吉は怒気を含めて言った。
「ばかもの!何故、牛蒡を持って来なかった!」
あっけにとられる農民達。秀吉は心底落胆して言った。
「墨俣に城を建てた時、長浜城主となった時、そして大坂
城を建て関白となった時。お前達はいつも牛蒡を持って来
てくれた。ありがたかった。まだ俺が中村の百姓だった頃
を思い出せた。」
214 名前:165[sage] 投稿日:2008/02/29(金) 09:48:52 ID:y5aGk3HI
秀吉と牛蒡(5)秀吉は続けた。
「わしは武士となって、信長さまのもとで必死に働いた。命
がけで働き出世した。それは、わしは貧しい農民たちが戦な
ど無く、豊かに暮らせる国を造りたいと思っていたからだ。
だが、武士として働いている内にその思いが薄れ、民をない
がしろにしようとする。欲が出るのだ。」
秀吉は農民を見渡し、言った。
「お前達の牛蒡は、その欲を消してくれた。自分が偉くなる
度にあの牛蒡を食べ、農民達の事を思い出した。だからこそ
再び働き、出世した。そして今は日本の王として働いておる。
今こそ、この国の民達が豊かに暮らせる様にと思ってな。あ
の時の牛蒡はわしにとってどんな金品よりもありがたかった。
農民達の期待に応えねば。そう思った。」
215 名前:165[sage] 投稿日:2008/02/29(金) 10:23:00 ID:y5aGk3HI
秀吉と牛蒡(6)秀吉は毅然として農民たちに言った。
「それなのにお前達は暮らしが豊かになると、百姓の基本
を忘れ、金品を集め刀や馬を俺に贈ると言う。そんな物は
大名か商人のすることだ。お前達が牛蒡を忘れる様な国を
造るつもりは無い。」
農民達は恥じ入り、秀吉に誓った。
「今度こそ、我々が丹精した尾張中村の牛蒡を贈ります。
われら必死に働きます。お許しくだされ。」
秀吉は言った。
「お前達の牛蒡、待っておるぞ。」
天下人となった羽柴秀吉は「豊臣」の姓を賜り、豊臣秀吉
と名乗り始める。秀吉は「豊臣」(しんをとませる)と言う
姓に、己の真の理想を見ていたのであろうか。
~終わり~
コメント一覧
牛蒡揚げ、牛蒡と牛肉の旨煮、金平、炊き込み、芋煮、かき揚げ、etc…
曖昧なままモヤモヤしたまま読み終わってしまった…台無しだ。
お前の事…嫌いじゃないぜ☆
どう料理してもぴたりと合って引き立て合う
ためしにトマト味の煮込みで使ってみることをお勧めします
俺は入れる派
裕福になった村人を鏖とかとか。